レペテックのゲストブック
チャルゼフの町を一泊で出て次の町マリーへ。腹の調子はまだ悪かったが、一泊US$60ものホテルに連泊していたら資金が足りなくなってしまう。
マリーへの道は砂砂漠の中に真っ直ぐ舗装道路が延びていた。時折ラクダの姿を見かけながら走っていると途中の砂漠の中にカフェが出現。地図にはレペテックという表記があるが、あるのはこのカフェとガソリンスタンドくらいらしい。せっかくなのでここで昼食を摂ることにした。店の人が何やら分厚いノートを出してきたので見てみると、旅行者のメッセージが書かれていた。ここを訪れた旅行者のゲストブックらしい。
ゲストブックにはタンデム自転車でユーラシア大陸横断中の二組の夫婦(宇都宮夫婦と西畑夫婦)がメッセージを残していた。ここは今年6月に通過したらしいのだが、僕たちがキルギスを旅しているときに大阪の友人夫婦(彼らも10年以上かけて自転車による世界一周ツーリングの経験あり)からメールで彼らの存在を聞いていたのだ。我々とは逆方向に走っていたのでどこかですれ違うかな?と思っていたのだが、同じ時期に同じ国を走っていたものの結局会えずじまいで残念。
それから過去の書き込みを遡ってみてみると、二年前にここを通った優子さん&健一郎さん夫婦の書き込みも発見した。優子さん&健一郎さんとは以前からの顔なじみである。出発はもう二年以上も前になるのだが、壮行会キャンプで見送ったのが懐かしい。この日記を書いている現在、アフリカを走っているとのこと。
たくさんの検問を経て夕刻マリーの町に着。この町もホテルは一軒しかなく、しかも一泊US$30と高値。昨日泊まったホテルよりは安いが、設備が古く値段相応の価値は無かった。たくさんのゴキブリに壊れた冷蔵庫、お湯は朝晩の限られた時間帯しか出ない。
メルブ遺跡
胃腸の調子が良くなってきた頃、マリー滞在三日目にして市内の博物館を訪れた。中へ入ると博物館の館員が二人もついてきて、展示物をそれぞれ英語とロシア語で解説してくれる。更には午後メルブの遺跡へ行くという話をしたら、館員の一人が格安で案内してくれることになった。
案内してくれた館員というのが実はメルブ遺跡の発掘に5年前から関わっている考古学者だ。彼には家に招いていただいた上昼食までご馳走してもらい、その後は広範囲に分散する遺跡を車で案内してくれた。遺跡案内のときはさすが考古学者、行く先々で事細かく解説をしてくれた。時々、そのへんに落ちている青銅貨や陶器の破片を拾っては「これは何世紀のもの、あれは何世紀のもの」と説明してくれる。
さてこのメルブ遺跡だが、昔は交易都市として機能していたようだ。東西南北から様々な勢力や宗教が入るという土地柄、戦乱も耐えなかったようで、遺跡の周りはぐるりと一周高い城壁で囲まれている。しかし古い時代の城壁は周りに土が堆積し城壁の形をとどめていなかった。まるで高い土盛りが広範囲を一周しているだけのように...。
遺跡を回った中でもう一つ印象深かったのは日干し煉瓦でできた砦のような建物。ここでは昔、モンゴルからチンギスハーンの軍勢が攻めてきたとき、捕らえられるのを恐れた女性が砦の上から飛び降りたという悲しい歴史があるそうな。その数40人も。
さて、遺跡見学が終われば明日でトルクメニスタンともお別れ。結局4泊5日の滞在のみで、国がまだはっきり見えてこないうちに出国しなければならないのが残念。
【みどり日記】 貴重な少額ドル紙幣 トルクメニスタンの通貨マナトのレートは闇両替でUS$1=20,000〜22,000マナト、公式ではUS$1=5,000マナト程度。この差は大きいのでふつうは闇両替をする。両替屋は駅やホテル周辺にたくさんたむろしている。
ただこのレートも交換金額によって少し変わってくる。ふつうは多く交換するほど交渉によってよいレートにすることが可能だが、トルクメニスタンでは小額紙幣の方がレートがよい。US$50紙幣、US$100紙幣などはあまり好まれないようだ。
ホテルは外国人に対しては高額な別料金のドル払いで要求してくる。そのくせドルのおつりを用意していない。私たちは毎回、丁度の額を用意しなければならない。受け取った小額紙幣はどこに隠しているんだ?
そんな体質が気に入らなくて、US$20のホテル代に対してUS$50紙幣を差し出してみたことがある。そのときは一度受け取ったもののやはりおつりが用意できなかったらしい。両替屋を連れてきてその紙幣を崩すと私にその両替屋への手数料を要求してきた。何か腑に落ちない。ホテルと両替屋の間の問題なのだから、ホテルが払うべきではないのか? 頑として支払いを拒否した。かわいそうなのは両替屋だった。今思うと、やはり私が支払うべきだったのかもしれない。この国は支払う方が丁度の額を用意するというルールなのかもしれない。
国によって価値観やルールは違う。トルクメニスタンとは逆に小額紙幣の方が不利になる国もあると聞く。どちらにも対処できるように旅行者は準備と柔軟な対応をしなければならないと今は反省している。 住みやすい国? マリーの街はとても綺麗だった。公園はよく整備され、噴水やライトなど資源をふんだんに使って飾り立てていた。国民は電気、ガス、水道が無料で供給されるそうだ。ガソリンもものすごく安く、1リットル当たり約3円程度。これならば国民も大統領を本当に支持し、敬愛しているのかもしれない。「大統領の写真が多くて驚いた。」と言うと、「日本では写真を飾らないのか。」と逆に聴かれてしまったこともある。
それに対して、トルクメニスタンは外国人にとってとても旅行しにくい国である。安いガソリンは、ガソリン税という形で追加徴収される。走行ルートは管理され、検問がやたらと多い。ホテルの外国人料金は数倍も高い。外国人からお金を搾取して、国民に還元でもしているのだろうか。
北朝鮮のイメージがあったので人々は貧しく、恐怖政治なのかと思っていたが、意外とそうでもないようだった。人々はふつうに幸せそうに暮らしているように感じられた。もしかしたら思ったよりも住みやすい国なのかもしれない。でも、わずか数日の旅では本当のところはよくわからなかった。
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